オリンピックのフィギュアスケート男子のフリーが終わりましたね。どの選手もここまで技術力と演技力を高めるためにどれだけの努力を重ね、自分と向き合い、葛藤を乗り越え、きっと家族も巻き込み、人生の中の膨大な時間をこのために費やしてきたのかと想像するだけで、メダルに関わらず一人一人本当に素晴らしいと心から拍手を送りました。
2日前にショートの演技が終わった時とても印象に残ったインタビューが2つありました。鍵山選手と宇野選手のインタビューです。彼らの言ったことはピアノコンクールを受ける時の心構えと同じだと思いましたので、ここに紹介します。
まずは鍵山選手がフリーに向けて言ったことは「順位のことは気にせずに、自分のやるべきことをやるだけだと思うので、とにかく自分のベストを尽くせるように」でした。
これはピアノコンクールを受ける本人にも、本人が幼い場合はご両親にも理解していただきたい大切なポイントです。コンクールや発表会という人前で本番を経験する機会というのは、その日に至るまでのたくさんの練習と曲の勉強という努力があってこそ、そしてその努力をしている間の成長があってこそ初めて本番で今までよりも成長した演奏を出来得る状況になるのです。まず何よりもここが一番大事です。練習の時に自分の今できる最高の状態まで曲を磨き込んでおき、本番はそれを出すためにベストを尽くす。これがコンクールや発表会の大切な経験です。コンクールの結果というのは後からついてくるかもしれないし、ついてこないかもしれないものです。ついて来たら嬉しいでしょうし、ついてこなければ悲しいかもしれません。でも本当はそこに至るまでの努力と経験と成長を得ることこそが一番大切であり、本人の今後の成長に直結することです。もし賞をいただけたとしても自分のベストの演奏ができなければ悔しいかもしれないし、賞をいただけなくても自分のベストが尽くせたなら納得ということもあります。
どれだけの努力を重ね練習を積んでも本番で失敗することだってあります。だからと言ってその努力は決して無駄ではないし、むしろその努力なくしてはコンクールを受ける意味はありません!そして一つだけ確実に言えることは、勉強や練習が足りない時、本番で練習の時より良い演奏はできません。そういう都合の良い奇跡は残念ながら起きないのです。
宇野選手は「完璧な演技がしたいというよりも、ちゃんと次につながる演技、失敗しても自分の成長につながる演技、決して自分の気持ちに負けずにいつも通りの自分を出すことそれがフリーの目標です。」と言いました。ピアノでも、自分の力量からするとギリギリの難度の高いものに挑戦することがあるでしょう。練習を積んで努力も重ねて来たけれど練習中でもうまく弾ける確率のあまり高くないような時に、順位などの結果を意識して萎縮したり守りに入ったりするより、宇野選手の言葉のように「自分の気持ちに負けずにいつも通りの自分を出す」つまり今できるベストを尽くすこと、そして「失敗しても自分の成長につながる演技」をする、つまり失敗したから駄目なのではなくてどうやったら次にそこを失敗しなくなるか、失敗を今後良くしていくためのきっかけにするという意識を持つことです。
コンクールで他者から評価されることが嬉しいのはよくわかります。努力を認められるというのは確かに嬉しいことです。でも、コンクールは自分の成長を促すポジティブな機会です。結果に左右されすぎず、結果がついて来なかった時でも冷静に自分の努力と成長を振り返って、努力もしたし成長もできたと感じたなら自分自身に「よく頑張った」と良い評価をあげてください。他人の評価は他人の評価として、自己評価は自己評価で持つことは大切だと思っています。

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