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脱力とは

maikolucky

脱力という言葉の意味を理解するのは本当に難しい。ということを私は中高生の頃に身をもって体験しました。本当に苦しんで苦しんだ末、やっとほんの少し分かりかけた頃に藝大に入りました。実際遅すぎたんですけどね…。


脱力という言葉がまず誤解を生みやすいような気がしています。力を脱すると書くわけじゃないですか。ふにゃふにゃふにゃ〜って体の力を抜いたら、もはや寝ることしかできませんけど??って中学生の私は思っていました。ピアノのところに手すら上がりませんけど??って本気で思いました。もはや意味不明、でした。私は混乱に混乱を重ねましたが、一方で先生は、根気強くあきらめずに年単位で私に脱力を教え続けてくださいました。

そして何かの拍子にちょっと良い音が出て、それを体の感覚で覚えて・・・と少しづつ自分の理解に繋げていったように思います。


私なりに脱力という現象を言葉にするとしたら、「エネルギーをピアノに渡す」みたいな感じです。例えると、私は野球のピッチャーでボールは音です。ピッチャーは投げる時に体の筋肉を使いますが、体を固めて筋肉を硬くすることはありません。むしろ筋肉は柔らかく動くようにしていないと腕もしならないしボールも速くならないでしょう。そしてボールが手から離れた後の体は「脱力」している状態です。ボールはピッチャーの「振りかぶって投げる」という動作から生まれたエネルギーで飛んでいきます。ピアノを弾くときは音のボールはピアノの中を通って飛んでいくのです。ざっくり言うとそういうイメージです。もし体のどこかが脱力できていない=ゆるんでいない=筋肉がリラックスしていないと、ボールが飛ばないはずです。だから、自分の力を脱するのではなくて、柔らかい筋肉で力(エネルギー)をピアノに受け渡すということが私の思う脱力です。また、ボールを投げると一言で言いましても、全力でスピードボールを投げることもあれば、軽くキャッチボールすることもあるでしょうし、ボウリングのように地面を転がすボールを投げることもあるでしょう。いろいろな重さと速さのボールを投げる時、体の使い方は自然と変わるはずです。それは、ピアノを弾く時に自分の求める音によって体の使い方が変化することと同じです。でも、どんなボールをどんな風に投げようとも、投げた後の体は力んでいないはずです。


最近お話しした合気道の先生は、脱力というのは余分な力を抜くことで、必要な力まで抜いてふにゃふにゃになることではない、と言われてすごくしっくり来ました。ピアノを弾く時、どこからが余分な力になるのかをしっかり体感でわかっておくことが大切だと思います。


皆さまは脱力をどのように考えておられますか?




 
 
 

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